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支笏湖付近を源に日本海までを流れる尻別川。内陸深くから来る川の意で、アイヌ語でシリ・ぺツと呼ばれたのが語源とされている。敷地は羊蹄山(蝦夷富士)を望む崖の突端にあり、この尻別川が羊蹄山の麓を大きく蛇行しながら悠々と流れていく様子を眼下に見下ろすことができる。

この建築には、クライアントの数々の功績を称える「トロフィーハウス」であると同時に、山小屋のように暖かくカジュアルで、身も心も完全にリラックスすることのできる空間を提供することが求められていた。

3つの直方体が支え合うように互い違いに重なり、崖の突端でバランスを保っているような、ミニマルで迫力のある外観でトロフィーハウスとしての象徴性を表しつつ、内部の仕上げには天然の無垢木材や石を多用し、”ビッグでファット“な家具を配して居心地の良さを追求した。

重なり合う3つの直方体のうち、一番下はウェルネスエリア、中央の1階はパブリックエリア、一番上の2階はプライベートエリアと、それぞれのボリュームにより明快にゾーニングされている。上下階をつなぐ階段は、建築にふさわしい風格を備えた”Grand Stair“として、それ自体が彫刻のようにシンボリックな存在となるようデザインされている。

建築そのものは極めてシンプルで機能的にまとめながらも、そこに厳選された家具や什器備品、アート、シガーやワインなどの嗜好品、一面に降り積もるパウダースノー、清らかに流れる川、羊蹄山への眺望など全ての必要不可欠な要素を調和させることにより、唯一無二の質の高い空間を創り出している。

2017年 竣工
設計

セシモ設計 + Peter Hahn Associates
インテリアWorkshop Miro
構造構造計画設計室
設備Academic
施工株式会社 中山組
開発NISADE Niseko Alpine Developments
撮影45g Photography(小島純司)
撮影Aaron Jamieson